Column

葬祭コラム

特殊な葬法

秋の深まりの中 で、あらためて美しい季節風土を感じます。
ここではいろいろ なテーマで葬送にかかわる文化を広をお伝えしてきました。今回は「葬祭学」の一部をご紹介しましょう。「葬法」についてです。これは 遺体にかかわる対応です。一般的に現代では火葬や一部、土葬の地域もまだあります。
さて、死にはいろ いろ特殊なケースもあります。
市井では幼子や妊婦、産婦の死が特別扱いをされました。愛媛県宇和島では子供の死に際して、コノシロ(魚)をくわえさせるという風習があり、同じよう に青森県でも干しいわしをくわえさせる習俗地域もあるようです。また子供の葬儀は、大人とは異なりあえて「正規な葬儀」をしないとい う言い伝えもあります。これを見ると一見簡略であり、また魚を口にすることは仏教では禁忌です。これをあえて持ちうるのも不思議で す。整わない葬儀や禁忌をおかすことから伺えるのは、「往生をさせたくない」という気持ちかもしれません。これは非情なことではな く、浄土へは行かせない、何よりもいち早く「生まれ変わり」を優先して祈念している愛情行為のようにも感じられます。
また古くは乳児の 死亡時には、墓に入れないで家の縁の下や出入り口の土間に埋葬したと云います。幼子は身近において早く再生を促す。これは大人の通常 死とは全く別の観念で対応されていると云えます。妊産婦の死去では、村人が鎌で腹を裂いて胎児を取り出し、背中合わせに埋める風習も ありました。これも母の荷を軽くし、子はこの世に出してあげるという、母子双方に対する愛情行為だとすれば、残酷な一面だけでは決し て理解できません。
生まれ変わりも如 実に実感していたようです。死んだ子供の脇の下や足の裏、手のひらなどに墨で字を書き、これを「ボウジ」と呼んで後日どこかで生まれ た子供が、同じ個所に痣などがあると、これを生まれ変わりと喜ぶ風習もありました。後日、生まれた子はその痣を消すために、先に死ん だ子供の墓の土でこすると消える、などの言い伝えもあります。
他には水死人など が沖から流れ着くと、古くからこれを「ヱビス」として手厚く埋葬祭祀します。後にはこれが大漁神となります。
避けたいものをあえていたわる、ウラミ、タタリは機縁・希望に転ずる。ここには凶事を転じて吉とするとい う、日本人特有の「転換思想」が見られます。
これも日本の基層文化のひとつですね。
 
補陀落渡海(熊野)

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樹上葬(奄美大島)

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