賽の河原
落語演目、「地獄八景」では冥土に行く「三途の川の河原」を賽の河原と云っている。また、親孝行を果たせないで、親より先に亡くなってしまった子供が、その罪を背負って石積みの苦行をする原野で、「一つ積んで母のため・・・」と鈴を流しながらその情景を詠う御詠歌も聞いたことがある。ついでに、お地蔵さんの民間信仰は、その救済にあると云う。
さてこの賽の河原と称する場所は、各地の霊場、山岳、あるいは昔の墓地周辺などいろいろある。有名なものでは、下北の恐山や津軽金木の川倉地蔵尊などのほか、御岳、立山などの霊山などにも見られる。共通した情景は、荒寥で「魂の集まるところ」を感じさせる。
「賽」の字はサイコロの「サイ」。(コロは接尾語)サイコロは角や骨で作られて、人為を超えた卜占的な呪具だ。骨からは死を連想させる。その流れから賽ノ神、つまり道祖神は先祖神であり、賽の河原は先祖たちのいるところという説もある。
そうなると、賽の河原は、「ご先祖さまに会える場所」ということにもなる。
そうして、いわれの場所の先には、素晴らしい景色が必ず見える。そこが対極の「浄土」である。この対になった自然風景の中に、豊かな死生観をみることが出来る。