Column

葬祭コラム

お葬式まで遺体を預かる処置施設

 エンバーミングにおいては、一般社団法人日本遺体衛生保全協会(IFSA)が中心的な役割を果たしています。そのホームページには、
『ご遺体からの感染防御、エンバーミングの日本における適切な実施と普及を目的として作られた団体です。ご遺体の尊厳を守り、大切なご家族の一員を亡くされたご遺族の悲しみを十分に配慮し、適切かつ安全で自由なお別れができる環境を作るために研究し、その実現のために活動しています。』
と述べられています。
 また、エンバーミングの普及に関しては、アメリカ・カナダでは90%以上で最も多く、イギリスや北欧では70%。アジアでもシンガポールは70%と高く、中国やタイなどでも多く広まってきました。日本でも感染症を防ぐ方法として尊重されています。
 IFSAのホームページではエンバーミングの施設として、全国55か所をあげています。そこから具体的にみると、北海道、岩手、山形、福島、栃木、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨、静岡、愛知、京都、大阪、兵庫、広島、福岡、熊本、大分、鹿児島ということです。東京、首都圏、あるいは大都市部では数カ所ありますが、実際の稼動率がどのくらいなのかはよくわかりません。
 従来、遺体保全はドライアイスが主流で、冷却することを主体に行われてきました。これは一時的な方法といわざるを得ませんが、火葬までの期間が短く、保全期間が少なくて済みなすので、今でも多くはこのような処置が一般的です。
 これに対してエンバーミングはその施設設置に、高度な衛生管理や排水、汚水処置、また遺体から出る破棄物に関しても極めて慎重な処置・処理がなされなければなりませんので、どこの葬儀社でも自社に併設させて簡単に設置できるものではありません。
 東京でもそのような施設を併設させて有しているとこは限られています。また火葬場などに共有されたエンバーミング施設があり、葬儀社がエンバーマーを派遣して、その場所を借りてエンバーミング処置をすることもあります。
 都市部では競合的にその需要が増える一方、四国や沖縄には未だ施設が無いなど、地域による偏りもあります。
 国内では、1988年からエンバーミングが遺体保全サービスとして開始され、エンバーミング処置を行う有資格者であるエンバーマーも年々養成されています。これからは堅実に拡充していくものと思われます。とくにインバウンドの増加に伴う海外搬送では、エンバーミングは欠かせない遺体処置といえます。